先鋒四十七士 今井 聖 撰

(「街」120号 解放区・自由区より 順不同)






チューリップ散るや顕な平壌市          森山いほこ
桜の白加齢の力ありにけり          安藤 尚子
青嵐楽譜の裏に化学式          伊草 節江
われに似し子の疎ましき冷し瓜          池田 義弘
醪蔵出づるやそこも五月闇          池本 光子
若芝へ巻き戻したるヨガマット          伊藤 容子
語らひの花明りして家族葬          上田貴美子
八十の身丈計らる青葉風          大嶋 邦子
花どきの箸とめて聞く雨の音          大森  藍
春日吸ひ込む貝塚の潦          片山いづみ
これよりは宮津辻辻幟立つ          後藤 恵子

片足立ちの長き一分囀れり          半澤登喜惠
スコールを走りハノイの魚になる          坂東 文枝
われに三日つづきの微熱蝌蚪に足          藤崎 幸恵
指笛に全身絞る青岬          古川 佳子
春嵐薬局名は青い鳥          宮田 絵里
みな去りし後の東京音頭かな          箭内  忍
鳶となり嵌め絵の如き代田かな          鷲巣 正徳
パナマ帽忘れて星に戻りけり          浅野 糸江
遠足の象のあたりを滞る          井上 郁代
ジギタリス斎場ふたつ隣り合ふ          大井 正志
「遠州の蕗やらつか」と言はれたる          大塚 俊

田植十日目ほうねんえびの現はるる          寺田 達雄
江の島の旅思ひ出す更衣          藤田 春香
手を入れしところを回る花筏          松野 苑子
犬病みて家族の揃ふ桜の夜          鈴木比呂子
瞬きとめ眼圧測定緑射す          鈴木八千代
稲荷寿司ひらく切株夏隣          髙勢 祥子
草笛が上手く吹けずに悪相に          竹内宗一郎
遠花火献杯あとのコハダかな          茸地  寒
ミクロンの浸透膜や花は葉に          竹中  瞭
投票を済ませて桃の摘蕾に          富田はなえ
奪衣婆にならむと枇杷の種を呑む          中江 智子
春蘭を枯らしてしまふ間取りかな          西澤みず季
夏満月つぶやいてゐる醪樽          袴田 知子

鳥雲に高速道路墓跨ぐ          岡田とく子
アロハシャツ歌詞が突然出てこない          加藤 冬人
桜蕊踏みて歩測を始めをり          金丸 和代
終点のかきつばたまで無言なり          河野けいこ
サミットの終りし町へ夏見舞          河原 徳子
六月の雨の音してジョンケージ          北大路 翼
五月三日夜間飛行の音激し          木下はるえ
エレベーターに羊の匂ひ緑の夜          草野 早苗
サーファーの足に一本黒い紐          栗林  浩
母猫の縞に仔猫の縞潜る          小久保佳世子
落花受く杖持つ右手と気付くまで          佐々木啓介
地球儀の器にガンボスープ盛る          杉山 文子




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