先鋒四十七士   今井 聖 撰


2014.8.1(「街」108号 解放区・自由区・未来区より 順不同)
   
去勢猫五月の雲に乗りたがる         末次  正

峰雲やさらりと子宮無きことを        玉田 憲子

心電図の波形うつくし梅雨に入る       寺田 達雄

午前二時浅蜊の水の薄緑           長岡 悦子

噴煙の曲がるところに鯉幟          松野 苑子

抱卵の鳩と目が合ふ水飲んで         紅葉 栄子

真中より乾くハンカチ癒ゆる如        森山いほこ

人台のドレスに残るコロンかな         伊草 節江

葉ざくらや影うすくをり避難の人        池田 義弘

付け文も浮名もはるかつばくらめ       池本 光子

噴水の見ゆるテーブルみな喪服        伊藤 容子

乳房にも猫の爪あと走り梅雨         大森  藍

薄づくりにても重たや初がつを        大類つとむ

過去へ行く方法たんぽぽの絮ひと吹き     片山いづみ

黄金週間松の匂にゐて安し          土屋みさ子

猫の鼻バニラアイスの味すなり        西澤みず季

スニーカーに畦柔らかし花疲れ        半澤登喜惠

郭公の畑日和また釣日和           半田  稜

カーネーション子の頭髪の初白髪       坂東 文枝

金属と布に切り分く旱星           穂阪 幹子

薬飲む爲に一口柏餅             前田惠美子

さくらんぼ熟れをり牛の匂ひをり       松田佳津江

葉桜やビルの二階の古着市          森  光葉

藍小紋の褌一名矢王祭            有馬 ルイ

緑陰やインクの滲む文たいせつ        石井 薔子

えごの花マンナンライスの水加減     いまぎいれようこ

サングラスかければローマ近づきぬ      大竹 照子

列車過ぎみな夏服となりにけり        大西 龍一

ホームステイの家の匂ひが白シャツに     尾上 恵子

産土の穀象虫を見て帰る           加藤 冬人

セミナーの題は「遺言」夕立来る       小泉ゆき江

涼やかに甲冑の足揃へあり          小久保佳世子

帰省子と同じ匂ひの湿布薬          佐々木啓介

教室の金魚が煙吐いてゐる          竹内宗一郎

からすの豌豆弁当売りの旗立てて       竹中  瞭

丘に桜無声映画のやうに馬          田中  圭

骨抱きふるさとの山みどりなる        たなか 游

腰伸ばす姉とヨットの消ゆるまで       岡田とく子

制服を売る路地裏の夕立かな         髙勢 祥子

白昼の悲鳴と蒲公英の絮と          吉永 興子

夏めくや豚にもバニラ色の羽         中江 智子

南向く鳩は十五羽花吹雪           久保田寿子

万緑の蠕動に我入らんとす          小林真智子

春灯や歳時記のしみ母のもの         阿部美弥子

ジャズ消えし百軒店や大西日         杉山 美鈴

採点後の彫塑ころがる春の闇         藤尾 ゆげ

水を撒くしまひは遠き者達へ         中田ミチコ





2013.2.1(「街」104号 解放区・自由区・未来区より 順不同)
   
葡萄秋刀魚南瓜生存率ひとごと       片山いづみ

ビール注ぐこの先生の記憶なし         木村厚子

忽然と門田のぼたの曼珠沙華          寺田達雄

先に寝る男に梨を剥いてをり          長岡悦子

ながながと昭和の渡る天の川(前書 卒寿)  野宮猛夫

来し方や東京タワーに月刺さり        松野苑子

無花果を洗つて故郷あてらるる        紅葉栄子

コスモスや同じ男に髪切られ        森山いほこ

梅を煮て一枚の絵に戻るなり         安藤尚子

フルートの息継ぎ激し蘭の花         伊草節江

帰省子にわが死後のこと話しけり       池田義弘

命日の霧中に座りゐたりけり        上田貴美子

火まつりのこの道ゆけば若狭かな       たなか游

夕暮の母叱りつつ種茄子          富田はなえ

店中のタオル膨らむ月明り           秦 鈴絵

蝗の甘露煮ばあちやんの名はみどり     箭内 忍

秋雨の一滴ほどのしこりかな        山下つばさ

優曇華や聞かずじまいの母の恋        石井薔子

登山帽繊維新聞広げをり           大井正志

コンビニの灯の及びたる稲の花        大竹照子

虫の声昭和の頃の予言読む          大西龍一

秋暑しエレベーターごとカルチャーへ     金丸和代

弟の賞状ばかり盆の梁             川島謙一

台風の目を日輪が二度抜かす         興梠 隆

めまとひの刻不燃物可燃物         竹内宗一郎

言葉少なく生きられた日や秋夕焼       草野早苗

消火器の入る凹みや秋隣           廣野順子

キリギリス掌ほどの草むらに         杉山美鈴
 
秋真昼パセリよけたる皿の縁         髙勢祥子

蛇鴉鼠台風鳩育つ               中田 結





2012.12.1(「街」103号 解放区・自由区・未来区より 順不同)
            
   
木苺と朝の雫をてのひらに            大森  藍

かなかなに電話が鳴れば姉と思ふ         大類つとむ

もう父の迎へに来ない祭かな           片山いづみ

差し入れの西瓜ぶら下げ古墳まで         木村 厚子

月鉾や引綱を曳く男前              後藤 恵子

仏壇に青鬼灯と養命酒              柴田 千晶

ビル街の雨脚白し祭笛              長岡 悦子

食べられる食べられないと青葉指す        松野 苑子

幻灯の昏さ蓮の花の下              森山いほこ

爪で押し上ぐ絵の具の平ら雲の峰         伊草 節江

関所二度通り被災地ひめぢよをん         池田 義弘

浜日傘立てて昼餉のチアガール          天野 沙子

繰り返し今が来て消ゆ夏の潮           石井 白樹

夜光虫見て来し髪の湿りかな           石川 暘子

口中に溶けゆく薬網戸に蝉(旧字)        植田  航

梅雨晴間通夜淡淡と労災死            大井 正志

病む母がくたくたに煮る夏野菜          尾上 恵子

はざ木伐り村に郭公寄りつかず          小黒  正

音階で言へばシ♯(シャープ)誘蛾灯       加藤 冬人

仮名文字の読めてくつろぐ夏座敷         河原 徳子

ひぐらしや映画の記憶二秒ほど          興梠  隆

籐椅子の汚れが艶となる時間          小久保佳世子

初盆会胡坐に家の狭くなり            上田貴美子

会議の黙天道虫になつて飛ぶ           竹内宗一郎

大夕立豚飼ふ人の長き顎             茸地  寒

温めて下着跡消す裸かな             西澤みず季

酒蔵の中の小さな扇風機             西塚 洋子

夏帯を締めてより行く行かぬとは         西村  邑

継ぎはぎの網で囲ひし西瓜畑           袴田 知子

末期の眼その眼が今も桃の上           秦  鈴絵

捨畳に炉を切りし跡忍冬             半澤登喜惠

榧青し囲むに腕十二本              藤崎 幸恵

開く時まづ親指が押す扇子            穂阪 幹子

鰻食ふ四十年を夫と生き             南  葉月

蚕豆を茹で命日と誕生日             箭内  忍

青梅の鬱の色して壜の中             杉山 文子

炎天を職あるごとく街に出る           杉山 愉一

蓮開く音補聴器が拾ひけり            井上  淳

炎昼や去勢の犬の局所垂れ            廣野 順子

少女期や戦の中の海紅豆             岡田とく子

古本を選りゐる扇子荒くなる           井上 郁代

濃紫なる傲慢や昼寝覚              中江 智子

鮎弁当ひらくSL煙吐く             小峰八重子

会計は白人が先青葡萄              杉山 美鈴

あざらしの鼻孔の開く夏の空           髙勢 祥子

貪り食ふ日暮の桃や立ちしまま          山下つばさ

ペリカンの歩く街角ゼラニウム          井上 さち



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テーマ:詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など - ジャンル:学問・文化・芸術

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