先鋒四十七士 今井 聖 撰

(「街」128号 解放区・自由区より 順不同)







座禅解きたりみんみんの高音部      伊藤 容子
三輪山も飛鳥も恋し柿をむく      小泉ゆき江
押入れに入ると兄ゐて夏の果      小久保佳世子
卸し器に生姜を立てて行方不明      斎藤 悦子
葡萄酒と南京錠と月光と      柴田 千晶
案山子みな神の遣ひや無言劇      末次  正
葉鶏頭旅につかれし男たち      杉山 愉一
全員が嘘つき盆の会議室      竹内宗一郎
わが悔いを大きく回す曼珠沙華      たなか 游
無患子や麒麟の舌の黒く長く      西澤みず季
馬鈴薯はポテトサラダにして返す      半澤登喜惠

式部の実雨こまやかに艶めけり      小黒  正
八月の窓が花瓶に伸びてゐる      金丸 和代
人とゐる孤独の中に柘榴落つ      草野 早苗
らふそく消ゆいてふはらはらむほんめく      栗林  浩
通勤路逸れて九月の堤防へ      小林真智子
上履きを洗ふ八月最終日      笹沼 千景
秋ともし何を言ひても独り言      菅原はづき
伊勢海老を網より外すあやすごと      杉山よし江
空白に秋蝶のゐる海流図      髙勢 祥子
満月や落とされしやう胡坐      高橋 麗子
髪切りがバスのダイヤの裏側に      竹中  瞭

動脈の風船治療水中花      藤田 春香
たこ焼を裏返す夜店のゲバラ      穂阪 幹子
江戸地図のここを貨車行く野分晴      松野 苑子
ベレー帽軽く潰して迎ふる秋      紅葉 栄子
月明に営業の貌家族めく      森島 裕雄
岩戸より出で来し貌よ鬼蜻蜓      森山いほこ
職辞してより萩に触れ芒にも      矢部 敏江
イーゼルを刺すや螇蚸に囲まるる      安藤 尚子
苦瓜に怒りと許しありにけり      伊草 節江
鉄道屋のテネシーワルツ星月夜      池田 義弘
丸葉露草地球包みてゐたりけり      池本 光子
月光を編み込んでゐる女郎蜘蛛      大竹 照子
玄米の炊き方を絵の団扇かな      岡田とく子

魚に振る藻塩八月十五日      田中  圭
虫籠に謀反企てさうな貌      中江 智子
金魚田の縁は平均台のごと      西村  邑
夏の雨フォーは涙に近き味      二本柳映子
凶作の予感の寒さ長電話      秦  鈴絵
尿の間は馬たたかれず秋祭      樋口亜茶子
野毛の月一輪サーカス用具店      藤尾 ゆげ
秋うらら栗鼠と分け合ふピスタチオ      藤木 裕子
描き終へて一房分けてくれにけり      松田佳津江
一叢の薄の中に日の入りぬ      南  葉月
荒神輿越しの福島訛かな      箭内  忍
生き延びて食みし釜山のまくは瓜      八尋舜一郎




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