先鋒 今井 聖 撰

(「街」126号 解放区・自由区より 順不同)







野外ライブの空を越えゆく石鹸玉      池田 義弘
柿若葉して釈玄寿となりし兄      伊藤 容子
交差点の水寄る所花びら来      梅元あき子
背の順と言はれて百日草の前へ      大嶋 邦子
体より小鳥出でしと思ふ春      木村 厚子
りんご飴の天辺平ら夏の空      柴田 千晶
水槽の中の住み分け夏暁      長岡 悦子
かき氷崩し少女の太眉毛      松野 苑子
柱時計外されし痕春の宵      紅葉 栄子
棒挿して墓地買ふ話大雪渓      森島 裕雄
スタートもゴールも岬鯉幟      森山いほこ

ベロニカに触るれば体紫に      草野 早苗
花うつぎ曲がれば社主の母校なり      栗林  浩
雀の子♯♭降るやうに      斎藤 悦子
蘭鋳や老人星せいのさびしかり      佐田 昭子
ドッジボール受けてくの字に夏来る      杉山 文子
十の字に涼しく川の会ふところ      杉山よし江
初夏の同じ間取りの美しき      髙勢 祥子
巣箱より高き所にコンセント      竹内宗一郎
西瓜の縞わが術痕のやうであり      茸地  寒
豚角煮ゆるゆる春の闌けてゆく      たなか 游
山藤は出雲阿国の腰の形      中江 智子

春の夜の騙し絵となる外階段      安藤 尚子
夏雲や経管食の旗かかげ      鷲巣 正徳
鎌倉や雉子去りてよりこの鼓動      浅野 糸江
首といふ脆き円柱夜の新樹      石川 暘子
夏めくと洗濯しては捨ててをり      井上 郁代
猫の尾のふれてゆきたる春愁      大竹 照子
ポンペイの遊郭標示蜥蜴去る      大塚 俊子
斜めの木に斜めに付ける巣箱かな      岡田とく子
農捨てし我にやさしき青田風      小黒  正
即かず離れず水馬の日和かな      加藤 冬人
行く春の二段ベッドの見ゆる窓      金丸 和代
会ふ度に乳歯増えゆく裸足かな      河野けいこ
被曝から遁れむ蝸牛の必死      北大路 翼

バッティングマシンから蜂襲ひ来る      西澤みず季
大阪の真中あたり競漕す      西塚 洋子
菓子箱で届きし奈良の八重桜      西村  邑
鏡面の左右ひやりと嘘をつく      秦  鈴絵
手足返せと蟻に責めらる少年期      畠山  尚
湧き水の昏きに出づる赤手蟹      半澤登喜惠
朧夜の北京ダックの孤島めく      藤尾 ゆげ
ジギタリス神保町に買ふ楽譜      藤崎 幸恵
筍やナウマンゾウの牙である      古川 佳子
喪の塩を払ふもひとり牛蛙      穂坂 幹子
囀りやバスに残りしバスガイド      松田佳津江
燕の子放電後の充電中      箭内  忍



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