先鋒四十七士 今井 聖 撰

(「街」124号 解放区・自由区より 順不同)






大晦日棘抜く針を焼いてをり       安藤尚子
悪相の佛も年を越しにけり        池田義弘
日向ぼこしてゐる刹那刹那かな      池本光子
着ぶくれてクロマニョン人頭骨の前    伊藤容子
帰らねば灯らぬ家や冬の月        上田貴美子
大寒のまだらな睡り飯が噴く       大森 藍
黙黙と冬の底まで穴を掘る        木村厚子
日の射してシーサーに雪積りをり     後藤恵子
炬燵に眠れば父の足母の足        柴田千晶
冬麗や秋田杉板特一等          松野苑子
エリザベス女王冬日の空瓶に       紅葉栄子

寒紅を出す天鵞絨(ビロード)の袋より   森山いほこ
釈迦牟尼もムンクも八十春の雪      山田富士夫
冬日向だんだんペーズリー模様      箭内 忍
冬薔薇見て身の中に白い線        吉永興子
初蝶の眩しさ我をつらぬけり       鷲巣正徳
寒昴己れのことが出来たる日       天野伸子
デヴィッド・ボウイ展金星の青し     有馬ルイ
初蝶待つ心積りは出来てをり       石川暘子
桃色の噴霧器春を待っている       井上さち
「寺内万年筆病院」冬うらら       大竹照子
骨折の胸椎つぶやく大寒         大塚俊子
聖樹から聖樹のあいだ完走す       大西隆一
葉ぼたんの渦や外より老いはじめ     岡田とく子

「儲けもん」と言ふ寒晴れ授かりぬ    小黒 正
水に浮くもやし春光の巣となりぬ     貝田厚子
こむづかしき貌して通る猫の妻      加藤冬人
つちふるや矢印運ぶ警備員        金丸和代
三寒四温地球が照れてゐる        北大路翼
回転ドア永久に出られず春の雪      草野早苗
もみ殻といふものありき寒卵       小泉ゆき江
甍なき古町に売る塩鯨          斎藤悦子
初釜やまだら日の入る天井へ       鈴木八千代
海までは届かざる径冬帽子        髙勢祥子
東京の根なし聖樹に照らさるる      竹内宗一郎

春浅しシフォンケーキと蛸ブツと     茸地 寒
初鏡八十五歳の貌決めて         竹中 瞭
干からびた狐銜えて犬戻る        富田はなえ
独り居のトマトスープに火事の味     西澤みず季
抱かれたくないかもしれぬ兎抱く     西塚洋子
餅食べて海岸線を踏みにゆく       秦 鈴絵
み臥せば漂白の夢冬のひる        畠山 尚
ナックルボールの如く冬日は海に落つ   半澤登喜恵
おれてもげて伊勢海老蓋を押し開く    藤尾ゆげ
地下深きプラットホームや冬の蜘蛛    藤崎幸恵
会のもつとも暗き聖夜かな        藤原明子
離れるとすぐに名を呼ぶ冬日向      穂阪幹子




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