先鋒四十七士 今井 聖 撰

2015.8.1(「街」114号 解放区・自由区より 順不同)

摘草のときどき横の姉を見て      松野苑子
咲き満ちて又兵衛桜飢餓の貌      紅葉栄子
バレリーナ見て来し夜の鯉幟       森山いほこ
種蒔くや孤独に強くなる季節       安藤尚子
蕗の葉にパン屑載せて待つてをり   伊草節江
今日だけの我だけのお茶摘みにけり  池本光子
灯を消してよりの手と足沖縄忌    大森 藍
百合匂ふ癌の告知の日より濃く    片山いづみ
麦秋や座布団のある無人駅      木村厚子
江戸古地図に父の名の橋手毬花    柴田千晶

我が髪は魚類の冷たさ靴買はむ   秦 鈴絵
認知症のきざし金魚に餌落す     半澤登喜恵
婚に神葬に佛や鳥帰る        半田 稜
佃煮のさびしき黒や花見ては     廣野順子
春服や補色に一点黄を入るる     藤崎幸恵
つくしんぼ汝を生みし故歯ぼろぼろ  古川佳子
亡命の前夜のやうに遠蛙       箭内 忍
ホームより扁額見ゆる樟若葉     天野伸子
泰山木の花や母校のよそよそし    石井白樹
噴水のむかうの国の眩しかり     石川暘子

ドライブの牛久がキスに見えて夏  井上郁代
海の岩にあさぎまだらの翅の片   井上さち
葉桜や転倒の吾をだれも知らず   井上 淳
友は皆留守電ばかり春の宵     いまぎいれ
春筍の苦き歯ざわり更に噛む    植田 航
尺八の楽譜のやうに初蝶来     大井正志
枇杷食べて皿に残りし喉仏      大竹照子
大蒜を叩き叩きて引退す       大塚俊子
栄転のごとし京都は花の中      岡田とく子

ポスターはみな勝者の顔街薄暑    尾上恵子
やはらかきいのちなりけり青蛙    加藤冬人
有楽町の弁当仲間春に逝く      金井文美
黒日傘増えゆく街を抜け出せず    金丸和代
サッカーの帰り躑躅の蜜を吸ふ    川島謙一
素麺の茹で時間ほど愛交はす     北大路翼
ドアスコープ一瞬よぎる蜥蜴かな   草野早苗
母の日の「はやくきてくたされ」が四度  栗林 浩
心張棒と言ふものありし五月闇     小泉ゆき江
オルガンにずれてブランコ揺れてゐる  小久保佳世子
鳥見てゐる袋掛けあと一つ        小峰八重子

ハンチングの鍔が触れたる金魚玉   佐々木啓介
一つ買ふケーキを寄せて春の箱    高勢祥子
冷奴の薬味の上をボブ・ディラン    竹内宗一郎
中指で引きぬ岩魚の水袋         たなか游
首長く額けはしくレース編む       中江智子
草を取る忘れたきこと草に置く      中村ノブコ
向日葵の芯から地震の始まりぬ    西澤みず季

| ■ HOME

«  | ホーム |  »