VISIBLE (66)   今井 聖


韮の花疎らに長く続く拍手

社学同の寮で覚えし韮炒め

「青嵐」例句作者はみな故人

夕顔や歩いて入る救急車

春宵の字幕スーパーに「撃て」

蛇の衣青鉛筆で持ち上げて

蟇と月「すずき典礼」駐車場

調教の二人一頭花みづき

空也の顎木喰の頬花みづき

ただ居るだけの残業バナナ喰ふ

六十年かけて尺蠖枝渡る

リピートで戻る田植の一列目

駝鳥の子鹿の子遠くみつめ合ふ

下枝の葉を鹿の子に与へたる

大甕のハイビスカス沖縄独立論

長谷川一夫追ひ詰められて菖蒲田へ

梅雨あがるリチャード・ギアのステップで

麦稈帽指舐めて札数へ出す

舟虫やみんなが馬鹿になる電波

滝音の中に善意と殺意湧く

貴闘力の張り手のやうな夏満月

酸漿の花の回りにはらからよ

雲の峰車窓の口の何か言ふ

ぼろぼろの蝶酸欠の鯉と逢ふ


(文藝春秋7月号に発表の句を含む)

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