VISIBLE (65)   今井 聖


葛根湯一包通学定期の裏

春風や舳先に立てば出る涙

私の範囲くつきり鳥雲に

風船も入れて駝鳥の卵撮る

親雀戻らずオイル交換済む

始祖鳥呼ぶ春の人工浜に出て

透き通る仔豚の耳や春の虹

フリージア抱きて耳の紅潮す

鳶の輪の半分見ゆる春炬燵

干されあるニッカボッカと若布かな

連翹の角をダンプの内輪差

英訳の問の中なる燕かな

読む瞑る聴く山手線春夜

出奔のごとし月夜の連翹は

灯すや三人官女一人は鬼

春嶺の襞ごとに砲隠しある

足に犬の顎乗つてをり春暁

十五組の頃の朝礼春の雲

枝のまた枝の果てなる初桜

紙雛揺らせしほどの地震なりし

並列のぶらんこ打ちつけても一人

ぶらんこに立ちても見えず帰路の父

和金二尾買ひぬケーキを諦めて


(角川学芸出版『俳句』四月号に発表の句と一部重複)

| ■ VISIBLE(主宰の作品)

«  | ホーム |  »