先鋒 今井 聖 撰

(「街」127号 解放区・自由区より 順不同)







上野の酒屋豆腐屋ほととぎす      池本 光子
手術受けに行くだけの道夏鶯      上田貴美子
草刈に行く母に貸す腕時計      梅元あき子
アテルイの憤怒の息ぞ青やませ      大森  藍
太古より群青の蛇連れて来よ      木村 厚子
額の花咲ける海路の万葉歌      後藤 恵子
長梅雨やロードムービー観に行かむ      玉田 憲子
台風の連れ来し闇のなまぐさし      寺田 達雄
大使館の門の中に門サングラス      長岡 悦子
香水の一滴づつに肌老ゆる      松野 苑子
かき氷の黄色半ドン懐かしき      森山いほこ

麦藁帽米澤駅で別れけり      山田富士夫
余花落花ガストの硝子越しに見て      安藤 尚子
鬘サングラス花柄の杖復職す      伊草 節江
天山祭頭より岩魚にかぶりつく      池田 義弘
鬼灯市売子の耳も染まりたる      鷲巣 正徳
父洗ひ網戸洗ひて帰りけり      浅野 糸江
熱風や圧搾屑鉄コンテナへ      天野 沙子
玉葱の深部信管あるごとく      石川 暘子
白南風やバス停の名は月の海      井上 さち
喜雨やがて豪雨とかはる妻の留守      井上  淳
夏帽子被れば永久に水平線      大竹 照子
胼胝の足引き遠雷を歩みけり      大塚 俊子
自販機より戻る千円雷近し      岡田とく子

天井にスプリンクラー梅雨の咳      金丸 和代
海で飲むビール何年生きられる      北大路 翼
夏の雨寺院でパウと鳴く孔雀      草野 早苗
リハビリのバーの長さよ蚯蚓鳴く      久保田寿子
鼻に入る海水痛し敗戦日      栗林  浩
八月の写真にコーヒー色の街      小久保佳世子
明易やアボリジニ画より太鼓音      杉山 文子
首痛めてゐてもさるすべり仰ぐ      杉山 愉一
河童忌の茶筒の中のさんざめく      髙勢 祥子
マッサージされて夏野になつてゆく      竹内宗一郎
川の字に寝てゐし頃の夏の星      茸地  寒

家中の笊漂白す台風裡      富田はなえ
夏了る油で油洗ふごと      中江 智子
千手観音一本避暑に出かけたる      西澤みず季
蟬の木を見上げ吾のなか吾がをらぬ      秦  鈴絵
夏草やアンコールワットの日の出待つ      畠山  尚
アメリカに住む家族来る夏が来る      半澤登喜惠
傾く八木節男踊りの大怒涛      坂東 文枝
蟬しぐれタオルぐるぐる巻きの位牌      藤尾 ゆげ
バックミラーにひたとパトカー旱梅雨      藤原 明子
顔ほどのルーペが並ぶ慰霊の日      古川 佳子
梅雨晴間教会で聞くアニーローリー      宮田 絵里
その境越ゆると戦士麦の秋      箭内  忍




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