先鋒三十 今井 聖 撰

(「街」129号 解放区・自由区より 順不同)







凍蝶の祈りの翅に射す日かな      鷲巣 正徳
農小屋の隅に本棚秋ともし      山本 要一
真昆布を一晩浸し冬となる      半田 稜
洗濯機の苦渋の呻き冬に入る      畠山 尚
街残暑カード翳せば開く墓      二本柳 映子
右上に看視の眼雪催      中江 智子
肛門へ触診の指聖歌鳴り      竹中 瞭
鰐の子のあかあかと跳ね十三夜      高橋 麗子
秋の夜の時計の裏の羽音かな      髙勢 祥子
霧の夜の屋根に忙しく動くもの      杉山 よし江
スキー帽で色分けされてボランティア      杉山 文子
聖菓焼く十年同じ割烹着      笹沼 千景
白すぎる十月ざくらゲバラの忌      栗林 浩
管刺さる手で熱燗を遣る仕草      川島 謙一
カーテンを洗ひし冬の夜の空気      金丸 和代
ちちははの家を壊せば寒波来て      加藤 冬人
体ごとマスクの中の待ち時間      大竹 照子
底魚の日に日に旨く初木枯      石川 暘子
幟抜く中古車センター冬の暮      天野 沙子
新米がうまし百まで生きてやる      池本 光子
月光を浴びたくて出るコンビニへ      紅葉 栄子
草雲雀りりりと誰の恋敵      松野 苑子
短日やテレビの裏へ裏へ歩く      古川 佳子
かりがねや売りに出てゐる船箪笥      藤田 春香
深海魚月の速さで上り来る      藤崎 幸恵
二つづつ蜜柑配られ解散す      西澤 みず季
消防士中州の薄持ち帰る      長岡 悦子
凍星や酔ひてビアンキ押してゆく      茸地 寒
白鳥と同じ声出す教授かな      竹内 宗一郎
兄死後の鳩のよく鳴く草の絮      木村 厚子




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